全方位外交〜バイセクシャルな大人のリアル

表の顔タカシ、自分の将来像を投影したカズマ、10歳から使う偽名のトシカズ、性欲重視の裏顔コースケ、夜の蝶に憧れて性差を超えたカオリ。おそらく全ての欲求が強すぎるのであろう、それらを満たす為に複数の人格を使い分けるように生きてきた私は、全人格の感覚値で好奇心を抱く人に会ってしまった。

8時にセックス開始で!

水橋くんは、突然電話して来てそう言った。俺は羽田空港でシャワーを浴びていた。

性欲がない、でもタックンのことは尊敬してる、セックスしたくない、タックンがしたいならお金ちょうだい!って言う。どうせ金でしょ?っと思いながら、それでもいいやって続けて来た関係。

タックンがセックス嫌いになるようにもっと金額上げてくよ!という意味不明な論理で一回10万、20万と払っていった。「他の男とやったらダメ。俺にバインディング。裏切ったらダメだよ」と安いキャバ嬢みたいなこと言って。でもそれでもいいや、騙されてもいいや、って思ってた。

 

一途に水橋君とだけやり続け、デカマラから抜け出せない体質に。お金も払い過ぎてそろそろ潮時かと思った頃、突然、「もうお金払わなくていいよ、失いたくない」と言われる。

 

「今日はキミを癒しに来たから」「待たせたね」

 

それ以降、デカマラしか感じない俺の治療のために、「いやだけどセックスしてあげる」という関係が続いた。潮吹きとトコロテン繰り返し、どんどん深みにはまっていった。

池の端くん

「体育会出身ゴリマッチョの巨根」というウリセン の売り文句。デカマラしか興味なくなってた俺は、ウリセンにデカマラ新人が入ると更新されるブログを定期的に見たり、ウリセン批評掲示板をみるのが習慣になっていた。なんだかコースケとして人間関係築くのが怖くなって、性欲はお金で解決しようと割り切っていた。そしてだいたい会ってみるとタイプでなく、部屋に入れて10分話して帰ってもらうことが続いた。もちろんお金は払ったけど、これまで経験してきたケツが疼くような男には出会えないと諦めていた。そんな頃に久々のヒットでやったのが池の端くん。体育会出身のラガーマンで190cmのガチムチ、確かにいい巨根してた。

全く無口で、不器用なところも好きだった。実は一流外資系企業に勤めてて、収入多いのに借金あってバイトしているらしい。二回目からはヤミケンになったけど、3回に1回くらいはお店を通して怪しまれないようにした。

でもなんだろう、エロさというか卑しさが無い。お前をいぢめてやろうとか。加えてこっちが追いかけたくなるスター性も無い。なんだろう、見た目や条件だけでは、発情しなくなってしまった。

なんとなく、年齢と心の成熟も感じて、寂しくなった。

石川くん#2

俺の見立てでは、スタイル重視でなく、ぽっちゃり巨乳もイケるノンケに関して、中途半端なマ○コですら負ける。加えて小柄が好きとかいうノンケの場合、ほぼマ○コに勝てない。多少見てくれが悪くても、小ずるい頭のある小柄ぽっちゃり巨乳にはマーケットがあり、その一部は所謂いいオトコである。遺憾。

女は俺の家族にまで嫌がらせをしてくるようになり、最終的に石川くんに判断迫ったところ、俺よりマ○コを取るという。人生初めて絶交っていうやつをした。とは言えその後女の汚さに気づいた彼は俺を頼ってきた。これまた執拗だったので、法廷で争った結果、夫婦にストーカー規制法の罰則を適用した。

女の嫌がらせのせいで俺には近づけず法的罰まで受けた。さぞ後悔しているだろうと期待したが、どうやらまだ気づかず幸せに暮らしているらしい。鈍感力って幸せ、小ずるいマ○コは幸せ掴むのである。ケツじゃダメなんだ。。。

石川くん#1

石川くんは俺の会社の同期。すごく気が合い、タカシとしての趣味も同じ。二人でよく出かけた。世の中の流れを感じる能力がほぼ無い彼は、世間的に出来るサラリーマンでは無かったが、純粋さが好きだった。俺たちは良くゲイカップル?と皮肉られたが、体の繋がりは一切なかった。

毎週末一緒に過ごす石川くんとの日々が日常となっていき心の中で彼氏と思っていた。俺に彼女がいても彼に彼女がいることは許せない感情もあった。ある時、キャリアに自信をつけた石川くんに女がチラついた時、俺は彼女のネガティヴキャンペーンに奔走した。自分の気持ちが歪んでいることは承知の上で。

その女の元カレが、実はカオリに通っていた永山くんだった。女は性欲旺盛で、永山くんを「私を幸せにしてくれる王子様キャラ」にしたくて必死で、毎回「抱いて」オーラを出すコソずるい性格だったので、永山くんは癒しを求めてカオリのテクに堕ちて通い詰めていた。

石川くんから聞く女の情報は、まさに永山くんの話と同じだった。タカシとしてもカオリとしてもコースケとしても、その女は食えないと印象を持った。あくまで親友タカシとして、定期的に女の情報を伝え、別れるように促した。実際は、石川くんを手放したくなかっただけな自覚はあったが、ひた隠しにした。

石川くんは真面目に悩んでいたが、心が綺麗すぎて、その悩みすら女に打ち明けていた。ある時女から俺に抗議の電話があった。石川くん同席の場ではしおらしくするくせに、1:1の電話では、とんでもない悪女だった(まぁ俺の方が悪いのではあるが)。でも結局、ノンケ男争奪戦は、マ○コに敗北した。

自己抑制?

鉢合わせ事件の後、中学生からずっと旺盛で自己を貫いて来た俺の性欲は制御出来るようになった。やりたいだけで行動を起こさなくなって、人からのお誘いも断る事が多くなった。気持ちの繋がりが重要、やっと気付けたと一段階登った気分になっていた

浜田山と八王子#4

朝方目が覚めたら、井の頭通りから一本入った保育園の前の路上で足を抱えていた。日曜日の朝、こういう心境の時は、嫌味のように朝日が眩しく、鳥が囀っている。世界はこんなに正しく回っているのにお前はなんて汚いんだと説教されているようで惨めになる。海に行こうか?いや浸り過ぎだな、、、、葛藤。

渋谷と代々木公園の間、政治家の家も多く、小道でもタクシーや警官が通る。人に会わずに自分をかわいそうと思える場所、被害者で惨めなんだもんといなせる場所、そういう都合のいい場所は無い事がわかった。自分で招いた事態なんだから逃げられないと初めて自覚した。

家に戻ったら、浜田山くんはもういなかった。八王子くんに、「コーチに全部話そう、全部俺が悪いし完全に被害者だと説明しよう。何か補填しろと言われたら払う」と男気だか責任感だかが芽生えたような口調で。八王子くんは黙って頷いた。

浜田山くんとはそれ以来会っていない。アパートに行ったら鍵がかかっていて、もう会いたく無いという意味だと悟った。あの時逃げずに話し合っていれば違う結果があったかもと後悔している。その後彼は広義の格闘技界で活躍、何度かタイトル獲得している。彼のことは、体もだけど、心で忘れられない。

八王子くんは、街で喧嘩に巻き込まれたと説明したらしい。彼の先輩の永山くんがカオリを度々訪ねてきたので、経緯は誰にも話していないと思われる。三歩後ろで支えるような奥さんと彼が幸せ感じる結婚すれば、俺の気持ちも落ち着くかなと思いながら、また自分に都合のいい解釈しか出来ないことを恥じる。

 

 

浜田山と八王子#3

アマチュアボクサーが現役大学ラクロス部主将を怪我させたことはだいぶまずい。二人とも口は硬そうで背景は秘密を守れそうとは言え。夫々に俺が泣きながら謝罪、どうしていいか分からず、二人とも俺のマンションに泊まってもらうことにした。

「ひどいです。突然来たのは悪いけど、コースケさんがこんな人だったなんて。そうじゃない、タカシさんて言うんですよね?なんで僕がこんな目に合うんですか?」そう、その通り。カオリが虚構なのは合意済みとは言え、純粋な学生の爽やかな欲につけ込んで「癒し系お姉さん」として騙してたのは事実。。

「あいつともやってんだな」浜田山くんはそれしか言わない。ごめん、あいつどころかもっといっぱいいるヤリマンなのとは言わず無言を貫いたが、そういう自分にもとにかく悔しかった。ごめんなさいしか言えなかった。生セックスの啓蒙して洗脳し続けたから、完全な裏切りがバレたことになる。。。。

俺は、どうにか八王子くんの人生に影響のないようにことを静め、浜田山くんとは今後も関係を続けられるような結論をずっと考え続けていたが、何時になっても思いつかなかった。八王子くんは明日になったら学校行くだろうし、学校から親御さんに説明入るだろうし。。。浜田山くんは俺を軽蔑するだろうし。

自己中過ぎる俺が招いたことは理解した上で、どうしていいか整理がつかず、深夜2時頃、俺は二人を残してマンションから走って逃げた。千駄ヶ谷まで走って、何故かタクシーに乗って「肉のハナマサ」とキレながら言った(意味不明)。タクシー降りたら富ヶ谷の交差点で、ふらふら歩いていた模様、、、