全方位外交〜バイセクシャルな大人のリアル

表の顔タカシ、自分の将来像を投影したカズマ、10歳から使う偽名のトシカズ、性欲重視の裏顔コースケ、夜の蝶に憧れて性差を超えたカオリ。おそらく全ての欲求が強すぎるのであろう、それらを満たす為に複数の人格を使い分けるように生きてきた私は、全人格の感覚値で好奇心を抱く人に会ってしまった。

石川くん#1

石川くんは俺の会社の同期。すごく気が合い、タカシとしての趣味も同じ。二人でよく出かけた。世の中の流れを感じる能力がほぼ無い彼は、世間的に出来るサラリーマンでは無かったが、純粋さが好きだった。俺たちは良くゲイカップル?と皮肉られたが、体の繋がりは一切なかった。

毎週末一緒に過ごす石川くんとの日々が日常となっていき心の中で彼氏と思っていた。俺に彼女がいても彼に彼女がいることは許せない感情もあった。ある時、キャリアに自信をつけた石川くんに女がチラついた時、俺は彼女のネガティヴキャンペーンに奔走した。自分の気持ちが歪んでいることは承知の上で。

その女の元カレが、実はカオリに通っていた永山くんだった。女は性欲旺盛で、永山くんを「私を幸せにしてくれる王子様キャラ」にしたくて必死で、毎回「抱いて」オーラを出すコソずるい性格だったので、永山くんは癒しを求めてカオリのテクに堕ちて通い詰めていた。

石川くんから聞く女の情報は、まさに永山くんの話と同じだった。タカシとしてもカオリとしてもコースケとしても、その女は食えないと印象を持った。あくまで親友タカシとして、定期的に女の情報を伝え、別れるように促した。実際は、石川くんを手放したくなかっただけな自覚はあったが、ひた隠しにした。

石川くんは真面目に悩んでいたが、心が綺麗すぎて、その悩みすら女に打ち明けていた。ある時女から俺に抗議の電話があった。石川くん同席の場ではしおらしくするくせに、1:1の電話では、とんでもない悪女だった(まぁ俺の方が悪いのではあるが)。でも結局、ノンケ男争奪戦は、マ○コに敗北した。