全方位外交〜バイセクシャルな大人のリアル

表の顔タカシ、自分の将来像を投影したカズマ、10歳から使う偽名のトシカズ、性欲重視の裏顔コースケ、夜の蝶に憧れて性差を超えたカオリ。おそらく全ての欲求が強すぎるのであろう、それらを満たす為に複数の人格を使い分けるように生きてきた私は、全人格の感覚値で好奇心を抱く人に会ってしまった。

浜田山と八王子#4

朝方目が覚めたら、井の頭通りから一本入った保育園の前の路上で足を抱えていた。日曜日の朝、こういう心境の時は、嫌味のように朝日が眩しく、鳥が囀っている。世界はこんなに正しく回っているのにお前はなんて汚いんだと説教されているようで惨めになる。海に行こうか?いや浸り過ぎだな、、、、葛藤。

渋谷と代々木公園の間、政治家の家も多く、小道でもタクシーや警官が通る。人に会わずに自分をかわいそうと思える場所、被害者で惨めなんだもんといなせる場所、そういう都合のいい場所は無い事がわかった。自分で招いた事態なんだから逃げられないと初めて自覚した。

家に戻ったら、浜田山くんはもういなかった。八王子くんに、「コーチに全部話そう、全部俺が悪いし完全に被害者だと説明しよう。何か補填しろと言われたら払う」と男気だか責任感だかが芽生えたような口調で。八王子くんは黙って頷いた。

浜田山くんとはそれ以来会っていない。アパートに行ったら鍵がかかっていて、もう会いたく無いという意味だと悟った。あの時逃げずに話し合っていれば違う結果があったかもと後悔している。その後彼は広義の格闘技界で活躍、何度かタイトル獲得している。彼のことは、体もだけど、心で忘れられない。

八王子くんは、街で喧嘩に巻き込まれたと説明したらしい。彼の先輩の永山くんがカオリを度々訪ねてきたので、経緯は誰にも話していないと思われる。三歩後ろで支えるような奥さんと彼が幸せ感じる結婚すれば、俺の気持ちも落ち着くかなと思いながら、また自分に都合のいい解釈しか出来ないことを恥じる。